構造設計という仕事をしていると、
いろいろな場所に行くことになる。
出張も多いし、
海外のプロジェクトに関わることもある。
それだけなら、建築の仕事では珍しいことではない。
けれどこの仕事には、
少しだけ特別なところがある。
普通の旅行では行かないような場所に、
ふと入り込むことがあるのだ。
空港の天井裏
例えば空港。
空港は多くの人が利用する場所だ。
しかし空港の内部には、一般の利用者が入ることのない空間がたくさんある。
ターミナルの天井裏。
広大な空間の上に広がる構造体。
梁やトラスが複雑に組み合わさり、巨大な屋根を支えている。
人が歩くフロアのすぐ上に、
もう一つの世界がある。
その空間に入ると、
建物の裏側を見ているような気持ちになる。
空港という巨大な建築が、
どのような骨格で支えられているのか。
それがよくわかる場所でもある。
高層ビルの外壁
高層ビルの現場でも、
普通の人が立つことのない場所に行くことがある。
ビルの外壁。
そこに吊られたゴンドラ。
ビルの外壁点検などで使われる装置だ。
ゴンドラに乗ると、
建物の外側をゆっくりと上下していく。
眼下には街が広がっている。
その景色は、
展望台から見る景色とは少し違う。
建物の表面に触れる距離で、
都市を眺めることになるからだ。
風が強い日には、
ゴンドラが少し揺れる。
そういう場所に立っていると、
建物の高さというものを改めて実感する。
バックヤード
あるときは、
遊園地の施設のバックヤードに入ったこともある。
華やかなアトラクションの裏側。
普段は見えない場所だ。
テーマパークという場所は、
表の世界と裏の世界がはっきり分かれている。
表側は夢の空間。
裏側は、巨大な構造物と設備の集合体だ。
巨大な屋根。
複雑な構造フレーム。
見えないところで建物を支えている骨格。
建築の世界では、
バックヤードにこそ面白いものがある。
そんなことを思うこともある。
日本という国
仕事や旅行で、
日本のいろいろな場所にも行った。
気がつけば、
47都道府県すべてを訪れていた。
北海道の広い空。
東北の雪の街。
関西の都市。
九州の温暖な空気。
日本という国は、
思っている以上に多様だ。
都市もあれば、
山もあり、
海もある。
建築もまた、
その土地ごとに違う表情を持っている。
世界という場所
海外にもいろいろ行った。
ただ、世界全体から見れば、
まだほんの一部に過ぎない。
感覚としては、
世界の20%にも満たないだろう。
世界は広い。
ニューヨークの摩天楼。
ロンドンの街並み。
東南アジアの都市のエネルギー。
同じ建築でも、
国が違えば空気も違う。
都市のスケールも違う。
その違いを見ることは、
構造設計という仕事にとっても
どこか意味のある経験だったように思う。
住んだ都市
仕事の関係で、
いくつかの国に住んだこともある。
アメリカ。
イギリス。
ベトナム。
それぞれの都市には、
それぞれの時間の流れがある。
ニューヨークのスピード。
ロンドンの落ち着き。
ベトナムの活気。
都市というものは、
建物だけでできているわけではない。
そこに暮らす人。
街のリズム。
空気の温度。
そうしたものが重なって、
都市の表情をつくっている。
この仕事が連れていく場所
構造設計という仕事は、
派手な仕事ではない。
建物の完成写真に名前が出ることも少ない。
しかしこの仕事をしていると、
思いがけない場所に行くことがある。
空港の天井裏。
高層ビルの外壁。
巨大施設のバックヤード。
普通の旅行では入らない場所。
そういう場所で、
建物の骨格を見ることがある。
世界は広い
世界は広い。
まだ見ていない都市もたくさんある。
まだ見ていない建築もたくさんある。
構造設計という仕事をしていなければ、
おそらく行かなかった場所もある。
そう考えると、
この仕事には少し不思議なところがある。
建物の骨格を設計する仕事が、
いつの間にか
自分をいろいろな場所に連れていってくれる。
そういうこともあるのだ。


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