旅の記憶 ― モン・サン・ミシェル

旅の記憶 ― モン・サン・ミシェル

フランスは、
個人的にはパリ市内より郊外の方が断然好きだ。

もちろん、
これは単なる個人の感想であって、
何か統計があるわけではない。

それでも、
何度か訪れるうちに
そう感じるようになった。


まずはパリの悪口

パリは美しい街だと思う。

歴史もある。
建築も素晴らしい。

しかし、
正直なところ少し疲れる。

タクシーに乗れば、
こちらが観光客だとわかった瞬間に
遠回りされることがある。

もちろん、
親切なドライバーさんもいる。

ただ、
かなりレアキャラだ。

スリも多い。

地下鉄では常に気を張る。

世界一かどうかは知らないが、
体感としてはかなり多い。

そして意外と、
安くて美味しいものに当たらない。

もちろん高級店に行けば素晴らしい。
しかし気軽にふらっと入れる店となると、
少し難しい。

LVの店員の態度に至っては、
かなり衝撃的だった。(言葉は選ばせてもらった)

同じ観光地のショップでも、
バルセロナやミラノでは
もっと自然で感じが良かった記憶がある。


郊外へ行くと変わる

ところが、
パリを少し離れると空気が変わる。

人が穏やかになる。

食べ物も美味しい。

街の空気も柔らかい。

フランスは郊外がいい。

今でもそう思っている。


モン・サン・ミシェル

その中でも、
特に印象に残っているのが
モン・サン・ミシェルだ。

ずっと行ってみたいと思っていた場所だった。

そして実際に訪れたとき、
本当に震えた。


海の上の城

遠くから見えてくるモン・サン・ミシェル。

海の上に浮かぶようなシルエット。

島全体が、
一つの巨大な城のように見える。

近づくにつれて、
その異様な存在感が増していく。


中世の世界

実際に上陸すると、
空気が変わる。

細い石畳。
古い建物。
入り組んだ坂道。

まるで中世のお伽話の世界に入り込んだようだった。

観光地ではあるのだけれど、
単なるテーマパークのような軽さがない。

本当に長い時間を積み重ねてきた場所の空気がある。


建築として考える

構造設計をしていると、
どうしても別のことも考えてしまう。

「これ、工事大変だっただろうな」

そんなことを考える。

資材運搬。
施工条件。
地盤。

現代でも難しい。

まして中世だ。

よくこんな場所に
これだけのものを築いたと思う。


てくてく歩く

山頂の修道院まで、
ずっと歩いて登る。

階段。
坂道。
また階段。

歩いていると、
少し息が上がる。

でも、
こういう時に思う。

「あぁ、健康で良かったな」

旅では、
結局最後に体力がものを言う。


ラム肉

夕食で食べたラム肉も忘れられない。

モン・サン・ミシェル周辺の羊は、
塩気を含んだ海風の中で育つ草を食べて育つ。

そのため、
肉にも独特の風味が出る。

ほんのり塩の香りがする。

説明だけ聞くと大げさに思えるが、
実際に食べると確かに違う。

とても美味しかった。

ただし、
値段もかなり良かった。

郊外価格ではない。

さすが観光地だと思った。


オムレツ

もちろん、
名物のふわふわオムレツも食べた。

あれはもはや、
普通のオムレツではない。

泡のような食感。

「これ、本当に卵なのか」

そんなことを思いながら食べていた。


途中の街

モン・サン・ミシェルへ向かう途中、
小さな街にも立ち寄った。

名前はもう忘れてしまった。

でも、
街の雰囲気は覚えている。

静かで、
落ち着いていて、
どこか豊かだった。


チョコレート屋

街角の小さなチョコレート屋に入った。

何気なく買ったチョコレートが、
驚くほど美味しかった。

パリ市内の高級店と比べても、
まったく引けを取らない。

むしろ、
こちらの方が好きかもしれないと思った。


郊外の豊かさ

立ち寄った店で飲んだワインも美味しかった。

そういう体験を重ねると、
やはり思う。

フランスは郊外がいい。

観光地として作り込まれたものではなく、
普通の暮らしの中に
自然に良いものがある。


旅の記憶

旅の記憶というのは、
有名な建築だけではない。

坂道だったり、
ワインだったり、
朝の空気だったりする。

モン・サン・ミシェルも、
そういう記憶が重なった場所だった。


まとめ

モン・サン・ミシェルは、
ただ美しいだけの場所ではない。

時間。
歴史。
建築。
食。

それらが重なって、
独特の存在感を持っている。

そしてフランスという国は、
パリだけではない。

少し郊外へ出た時にこそ、
その国の本当の豊かさが見える気がする。

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