空港という建築は、少し特別な場所だ。
多くの人にとっては、
旅の出発点か、
あるいは到着点にすぎない。
飛行機に乗る前に通り過ぎる場所。
それが空港という施設の一般的な印象だろう。
しかし構造設計の仕事をしていると、
空港の見え方は少し違ってくる。
巨大な屋根。
柱の少ない大空間。
建物全体を覆う大胆な構造。
空港という建築は、
構造のスケールを強く感じる場所でもある。
JFK空港
ニューヨークにあるジョン・F・ケネディ空港。
世界でも有数の大規模空港の一つだ。
初めて降り立ったとき、
まず感じたのはその広さだった。
滑走路の数。
ターミナルの数。
人の多さ。
すべてのスケールが大きい。
ニューヨークという都市の玄関口として、
その巨大さはむしろ当然なのかもしれない。
しかしこの空港には、
もう一つ印象的な建築がある。
TWAフライトセンター
JFK空港の中にある、
TWAフライトセンター。
エーロ・サーリネンによって設計された建築だ。
1960年代の空港建築でありながら、
今見ても非常に印象的な建物である。
白いコンクリートのシェル構造。
翼を広げたような屋根。
建物はまるで、
今にも飛び立ちそうな鳥のようにも見える。
空港という場所に、
これほど象徴的な形を与えた建築は
それほど多くない。
シェル構造
この建物の特徴は、
何といってもその屋根の形だ。
大きく広がる曲面。
柱の少ない空間。
コンクリートのシェル構造によって、
大胆な形が実現されている。
シェル構造というのは、
構造体そのものが建物の形になる構造だ。
梁や柱で支えるというより、
面そのものが力を受ける。
そのため、
非常に美しい曲面をつくることができる。
TWAフライトセンターは、
その代表的な建築の一つと言えるだろう。
時間を越えて残る建築
TWAフライトセンターは、その後しばらく使われない時期があった。
航空会社の再編や空港施設の変化によって、
この建物は長いあいだ空港の片隅に静かに残されていた。
空港は常に変化する場所だ。
新しいターミナルが建設され、
古い施設は役割を終える。
しかしこの建物は、完全に消えてしまうことはなかった。
近年、この建築は新しい形でよみがえった。
現在、TWAフライトセンターは TWAホテルとして再生されている。
サーリネンが設計した建物をできるだけそのまま残しながら、空港ホテルとしてリニューアルされた。
内部空間には1960年代の航空時代のデザインが残されていて、
まるで時間が少しだけ巻き戻ったような感覚になる。
空港という場所は、常に未来に向かって動いている。
その中で、この建物だけが少し違う時間を持っている。
サーリネンの建築
エーロ・サーリネンの建築には、独特の流れがある。
直線よりも曲線。
箱のような建物ではなく、
空間そのものが動いているような形。
TWAフライトセンターの屋根もそうだ。
コンクリートのシェル構造が大きく広がり、
まるで翼のような形をつくっている。
建物が飛び立つ瞬間を表現しているようにも見える。
構造設計の視点で見ると、この建物は非常に興味深い。
構造が建物の裏側に隠れているのではなく、
構造そのものが建築の形になっている。
柱や梁が主張するわけではない。
面そのものが建物を支えている。
シェル構造というのは、
構造とデザインが最も近い場所にある構造形式かもしれない。
建築が残る理由
空港の建物は、
機能の変化によって役割を終えることが多い。
しかし、すべての建物が消えていくわけではない。
ときどき、
時間を越えて残る建築がある。
TWAフライトセンターは、
その一つだろう。
空港のターミナルとして生まれた建物が、
今はホテルとして使われている。
役割は変わっても、
建物の形は変わらない。
翼のように広がる屋根。
流れるような曲面。
あの建築は、
今もJFK空港の中に静かに存在している。
空港建築の時代
1960年代は、
航空時代の始まりとも言われる時代だった。
ジェット機の登場。
国際線の拡大。
世界が急速につながり始めた時代。
その時代の空港建築には、
どこか未来への期待のようなものがあった。
サーリネンのTWAフライトセンターも、
その象徴のような建築だ。
建物そのものが、
飛行機の時代を表現している。
空港という舞台
空港には、
特有の空気がある。
出発する人。
迎えに来る人。
旅を終えた人。
さまざまな人の時間が交差する場所だ。
その空間を覆う建築が、
どのような形をしているか。
それは意外と重要なことなのかもしれない。
TWAフライトセンターは、
空港という場所のドラマを
建築として表現したような建物だった。
構造設計という視点
構造設計の仕事をしていると、
建物を見るときに
どうしても構造を見てしまう。
この屋根はどうやって支えているのか。
このスパンはどのような構造なのか。
TWAフライトセンターを見ても、
やはり屋根の構造に目がいく。
しかし同時に思う。
構造というのは、
単に建物を支えるためだけのものではない。
ときには、
建築そのものの表情になる。
この建物は、
まさにその例だった。
空港と建築
世界には多くの空港がある。
巨大なターミナル。
広いコンコース。
ガラスの屋根。
しかしTWAフライトセンターのように、
建築そのものが記憶に残る空港は
それほど多くない。
空港という建築は、
機能が優先されることが多い。
それでも時々、
建築として強い個性を持つ建物が現れる。
TWAフライトセンターは、
その代表的な例の一つだろう。
まとめ
空港は、
多くの人にとって
単なる通過点にすぎない。
しかし建築として見ると、
非常に興味深い場所でもある。
巨大な屋根。
広い空間。
そして構造。
JFK空港のTWAフライトセンターは、
空港建築の中でも
特に印象的な建物だった。
建物が翼のように広がり、
まるで飛び立つ瞬間を
建築として形にしたような建物。
空港を訪れたとき、
少しだけ屋根を見上げてみると
また違った景色が見えるかもしれない。


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