構造設計者が見た美しい構造
建物を見て、美しいと思う瞬間がある。
それは必ずしも、
外観のデザインだけではない。
構造そのものが美しい。
そう感じることがある。
構造設計の仕事をしていると、
そういう建築に出会うことがある。
では、美しい構造とは何だろうか。
明確な定義があるわけではない。
合理性。
力の流れ。
形の必然性。
そうしたものが重なったとき、
構造は美しく見える。
世界には素晴らしい建築があふれている。
正直なところ、5つに絞ることなどできない。
それでも、ふと尋ねられたときに思い出す建築がある。
今回は、そんな5つの建築を挙げてみたい。
ルーブル美術館のピラミッド
パリのルーブル美術館の中庭に立つガラスのピラミッド。
I.M.ペイによる設計。
歴史的建築の中に、
現代的な構造が置かれている。
ガラスと鉄によるシンプルな構造。
しかしその形は非常に明快だ。
ピラミッドという幾何学。
構造としても、
非常に合理的な形である。
力の流れが素直で、
無駄がない。
あの透明な構造体は、
軽やかでありながら
しっかりと空間をつくっている。
Galaxy SOHO
北京にあるGalaxy SOHO。
ザハ・ハディドによる設計。
この建築の特徴は、
連続する曲面だ。
直線がほとんどない。
建物全体が、
流れるような形でつながっている。
構造的に見ると、
非常に難しい建築である。
しかしその複雑な形が、
一つの連続した空間をつくっている。
構造と空間が
一体になっている建築だった。
シドニーオペラハウス
シドニーの港に立つ、
あの独特な建物。
シドニーオペラハウス。
ヨーン・ウッツォンによる設計。
あの屋根の形は、
構造としても非常に特徴的だ。
シェル構造によって
成立している。
建築としての美しさと、
構造の合理性が重なっている。
この建物は、
構造の可能性を広げた建築の一つだと思う。
カテドラル教会
東京にあるカテドラル教会。
丹下健三の代表作の一つである。
この建物も、
構造がそのまま空間になっている建築だ。
圧倒的なコンクリートのボリューム。
そして直線が組み合わさることで生まれる、幾何学的な曲線。
一見すると相反するような要素が、
一つの空間の中で成立している。
重さと鋭さ。
直線と曲線。
そのすべてが、
構造として一体になっている。
内部に入ると、
光が上から落ちてくる。
コンクリートの壁面を伝う光が、
空間に静けさを与えている。
構造と空間と光。
その関係が非常に美しい建築だと思う。
瀬戸大橋
建築ではないが、
あえて挙げたい構造がある。
瀬戸大橋である。
巨大な橋梁構造。
海をまたぐスケール。
橋という構造物は、
力の流れが非常に明確だ。
引張。
圧縮。
曲げ。
そのすべてが、
形として現れる。
瀬戸大橋を見たとき、
構造そのものの美しさを感じた。
美しい構造とは
こうして並べてみると、
それぞれまったく違う建築である。
形も違う。
用途も違う。
構造形式も違う。
それでも共通していることがある。
構造が素直であること。
無理がないこと。
そして
構造がそのまま空間や形になっていること。
そういう建築は、
やはり美しい。
選びきれない建築
世界には、
まだまだ素晴らしい建築がある。
とても5つでは足りない。
そのときの気分や、
記憶によっても変わる。
今回挙げた5つは、
あえて選んだというより、
ふと尋ねられて思い出した建築に近い。
構造設計という仕事をしていると、
そういう記憶が少しずつ積み重なっていく。
まとめ
構造の美しさは、
必ずしも派手なものではない。
しかし、
力の流れが素直で、
無駄のない構造は美しい。
建築を見るとき、
少しだけ構造に目を向けてみる。
それだけで、
違った景色が見えることがある。


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