構造設計士という仕事
建物を見上げるとき、人はたいていその形や外観に目を奪われる。ガラスのファサードが美しいとか、曲線が大胆だとか、そんな話になることが多い。建築の世界でも、注目を集めるのはたいていデザインを考える設計者だ。
けれど、建物というものは外見だけで立っているわけではない。むしろ目に見えない部分、つまり骨組みのほうが本質に近い。
その骨格を考えているのが、構造設計に携わる技術者である。
一般に建築設計に携わる人は「建築士」と呼ばれる。また、建築設計をする人の中には、自らを「建築家」と名乗る人もいる。呼び方はいろいろあるが、このブログでは、建物の構造設計に携わる技術者を「構造設計士」と呼ぶことにしたい。
つまり構造設計士とは、建物の骨組みを設計し、その安全性を確保する仕事をする技術者のことである。
建物の骨格を考える
建物はただの箱ではない。地震や風、建物の重さ、人の荷重など、さまざまな力を受けながら立っている。
構造設計の仕事は、それらの力に対して建物が安全であるように骨組みを考えることだ。
どんな材料を使うのか。どのような構造形式にするのか。柱や梁の大きさはどれくらいにするのか。
そうしたことを一つ一つ検討しながら、構造計算を行い、図面を作る。
建物の完成後、そこを訪れる人が構造設計の存在を意識することはほとんどない。だが、その建物が安全に使われているという事実そのものが、構造設計の仕事の結果と言える。
建築には三つの設計がある
建築設計には大きく分けて三つの分野がある。
・意匠設計
・設備設計
・構造設計
意匠設計は建物の形や空間を考える分野だ。設備設計は空調や電気など、建物を機能させる仕組みを設計する。そして構造設計は、建物の安全性を支える骨組みを考える。
この三つの分野がそろって初めて、建物は成立する。
建築の話題では意匠設計が注目されることが多いが、構造設計はその建築を成立させるための基盤とも言える。
地震国の構造設計
日本で構造設計の役割が大きい理由は明確だ。地震が多いからである。
世界的に見ても、日本ほど地震が多い国は珍しい。建物は常に地震のリスクを前提として設計される。
構造設計では、建物がどの程度の揺れに耐えられるのかを計算し、安全性を確保する。耐震設計という言葉が広く知られているのも、そのためだ。
建物は完成してしまえば静かにそこに立っている。しかし、その裏では膨大な検討と計算が行われている。
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構造設計という職業
構造設計の仕事は、派手な仕事ではない。
建物の完成写真に名前が出ることも少ないし、建物を訪れた人が構造設計者の存在を思い出すこともほとんどない。
それでも、この仕事には独特の魅力がある。
設計した建物が完成し、そこに人が集まり、日常の風景が生まれていく。その空間が安全に使われていること自体が、設計者にとっては何よりの成果だからだ。
まとめ
構造設計士とは、建物の骨組みを設計し、安全性を支える技術者である。
建築というとデザインが注目されがちだが、その建築を成立させているのは、目に見えない構造の技術でもある。
このブログ「構造設計士の視点。」では、構造設計の仕事や建築の現場について、実務の視点から少しずつ紹介していきたいと思う。

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